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第1回で「僕のAI課金は平均の7.7倍」と分かり、第2回で「多いかどうかは手取りとの比率で見る。5%までが目安、10%からAI課金貧乏ライン」という物差しを作りました。

ただ、第2回を書きながらずっと気になっていたことがあります。手取り比って、本当にその人の生活を表しているのか。

手取り比の弱点:家賃と家族構成を無視している

第2回の物差しは「AI課金 ÷ 手取り」でした。分かりやすいし、計算も一瞬です。でも、手取り30万円の人が2人いたとして、

  • 東京で一人暮らし、家賃7万5千円
  • 実家暮らし、家賃0円

この2人がどちらもAIに月3万円払っていたら、手取り比はどちらも10%。第2回の判定は同じ「AI課金貧乏ライン」になります。でも、家計への重さは明らかに違う。後者は家賃分の7万5千円がまるごと自由に使えるお金に乗っているからです。

家族構成も同じです。夫婦と子ども2人の家計には、教育費や食費が一人暮らしの倍以上かかります。そこからAIに3万円を出すのと、独身で出すのとでは、削っているものが違う。

つまり本当に知りたいのは、「手取りの何%か」ではなく、「生活費と貯蓄を引いて残ったお金の何%か」です。第2回の50/30/20ルールで言えば、「自由に使う30%」の中でAIがどれだけ幅を取っているか。

問題は、その「生活費」を読者一人ひとりに入力してもらうのは無理があること。食費、光熱費、通信費、交通費……全部の欄を埋めろと言われたら、僕なら閉じます。

統計で「あなたの標準家計」を先に作っておく

そこで発想を変えました。生活費を入力してもらうのではなく、統計からその人に近い「標準家計」を先に作って見せて、違うところだけ直してもらう

使ったのは総務省の公的統計2本です。

  • 家計調査(2025年 家計収支編)。家族構成別に「1世帯が1か月に何にいくら使っているか」が出ています。食料、光熱・水道、通信、教養娯楽、交際費など
  • 住宅・土地統計調査(2023年)。都道府県別・世帯人員別の「1か月当たりの家賃」が出ています

家計調査だけだと家賃が使えません。持ち家の世帯が混ざって住居費がとても低く出るからです。なので家賃だけは住宅・土地統計調査から、住んでいる都道府県と世帯人数で別に引いてきます。

読者に入れてもらうのは5つだけ。月の手取り、都道府県、家族構成、住まい(賃貸・ローン・持ち家)、そしてAIに払っている月額の合計です。これだけで、次のような「標準家計」が自動で出てきます。

例として、手取り30万円・東京都・一人暮らし・賃貸の場合はこうなります(円/月、統計をもとに手取りに合わせて調整した値)。

項目 標準家計
家賃(東京都・1人) 74,637
食料 43,725
光熱・水道 10,717
交通 15,534
通信 6,630
教養娯楽 23,098
交際費 14,561
その他の項目の合計 39,670
生活費 合計 228,572

ここに貯蓄の目安(手取りの1割、J-FLECの「年収の1割」に合わせました)3万円を足すと、残りは41,428円。これが「自由に使えるお金」です。

「うちは食費もっと少ない」「通信費は格安SIMで3千円」という人は、その欄だけ直せば計算し直されます。全部入力する必要はありません。

統計の値を、そのまま使わなかったところ

正直に書いておきます。統計をそのまま使うと、この診断は成立しませんでした。

家計調査の平均は、可処分所得(手取りに近いもの)が一人暮らしで月31万円、夫婦2人で月49万円、夫婦と子ども2人で月60万円くらいの世帯の平均です。つまり手取りが平均より低い人は、初期値の生活費だけで手取りを超えてしまい、AIに1円払っただけで最上位の判定になります。最初に試したとき、夫婦・大阪・手取り40万円・AI月1万5千円で「AIのために働いている」が出て、これは違うだろうと思いました。

そこで、家賃以外の項目は「読者の手取り ÷ 統計の可処分所得」の比で調整しています(極端にならないよう0.5倍から1.5倍の間に収めています)。家賃は都道府県の統計値をそのまま使います。家賃は収入に比例して勝手に安くならないからです。この調整は画面にも倍率として表示しています。

もう一つ。家計調査の「教養娯楽」には、すでにその世帯の娯楽費が入っています。AI課金は本来この中の一部かもしれませんが、この診断では「標準家計とは別にAIに払っている」扱いで計算しています。「教養娯楽をAIに置き換えている」という人は、教養娯楽の欄を減らして考えてください。

使った統計の細かい加工(どの表のどの列か、交通費に自動車関係費を足したこと、片親世帯の扱いなど)は、記事の最後にまとめました。

で、あなたの生活では、どうなのか

ここで診断できます。入力した数字はどこにも送られず、この画面の中で計算しているだけです。

  1. 5つ入力
  2. 標準家計を自動生成
  3. 判定
あなたのこと

判定の線は、第2回と同じくこのブログの独自指標です。自由に使えるお金の15%までが「普通の人」、33%(3分の1)を超えたら「沼」、50%を超えたら「AI課金貧乏」、100%を超えたら「AIのために働いている」としています。自由に使えるお金の半分以上がAIに消えている状態を「貧乏」と呼ぶのは、そこまで無理のない線引きだと思っています。

手取り比では同じ10%なのに

さっきの例で、AI課金を月3万円として判定を並べてみます。

条件 手取り比 自由に使えるお金 AIの割合 判定
手取り30万・東京・一人暮らし・賃貸 10.0% 41,428円 72.4% AI課金貧乏
手取り30万・全国平均の家賃・一人暮らし 10.0% 62,635円 47.9%
手取り30万・東京・一人暮らし、AIは月1万5千円 5.0% 41,428円 36.2%

手取り比は同じ10%でも、東京の家賃かどうかで判定が1段変わります。そして第2回で「気にしなくていい範囲」としていた手取り比5%が、東京の一人暮らしでは自由に使えるお金の3分の1を超えて「沼」になります。手取り比の目安は、家賃が高い都市の一人暮らしには甘すぎた、というのが今回分かったことです。

僕はフリーランスなので、平均値で出してみる

僕はフリーランスなので、会社員の平均年収と比べてもあまり参考になりません。そこで今回は、35歳前後の日本の平均的な世帯として計算してみました。

総務省の2025年家計調査では、世帯主が40歳未満の勤労者世帯は、世帯主の平均年齢が34.3歳です。ほぼ35歳モデルとして使えます。平均世帯人員は3.20人、可処分所得は月541,537円でした(総務省「家計調査 2025年平均結果の概要」)。

診断では、3.20人に最も近い「夫婦+子1人」を選び、家賃も住宅・土地統計調査にある全国3人世帯の平均74,935円をそのまま使いました。

  • 世帯主35歳
  • 夫婦+子1人の3人世帯
  • 世帯の手取りは月541,537円
  • 賃貸、家賃は全国3人世帯の平均74,935円
  • AI課金は僕と同じ月44,408円

国税庁の年齢別データでは、35〜39歳の平均給与は482万円です。ただし、これは1人分の額面給与で、世帯の手取りではありません。今回はチェッカーへ直接入れられる家計調査の可処分所得を使いました(国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」)。

これは僕の生活を再現したものではなく、僕のAI課金を35歳前後の平均家計へ置いたらどう見えるかという比較です。

計算結果はこうなりました。

項目 35歳の平均世帯モデル
世帯の手取り 541,537円
生活費(平均家賃74,935円を含む) 406,727円
推奨貯蓄(手取りの1割) 54,154円
自由に使えるお金 80,656円
AI課金 44,408円
手取りに占めるAI課金 8.2%
自由に使えるお金に占めるAI課金 55.1%
判定 AI課金貧乏

手取り比だけなら8.2%で、第2回の「沼」です。ところが、平均的な生活費と貯蓄を先に引くと、自由に使える80,656円のうち半分以上がAIへ消える計算になりました。

標準家計の「教養娯楽」32,507円には、AIで置き換えられる支出が含まれている可能性があります。仮に教養娯楽を丸ごと0円へ直すと、自由に使えるお金は113,163円、AIの割合は39.2%。判定は「沼」まで下がります。

ただし、僕のようにフリーランスがAIを仕事で使う場合、本来は家計の娯楽費ではなく事業の経費や投資として見るべきです。手取りを計算する前にAI代を事業経費として引いているなら、この診断へ同じAI代をもう一度入れると二重計上になります。

平均家計へ置けば、僕のAI課金はかなり重い。でも、これだけで僕自身が「AI課金貧乏」だとは言い切れません。最後は第1回で書いたとおり、AI代以上の仕事や時間を生み出せているか、ROIで判断する必要があります。

統計の限界も書いておく

  • 家計調査の「夫婦+子1人」「夫婦+子2人」は、世帯人員3人・4人の世帯で近似しています。世帯類型別の表には子の人数別が無いためです
  • 「ひとり親+子」は、家計調査の「片親と未婚の子供から成る世帯」の値です
  • 家賃は「家賃0円を含まない平均」です。社宅や実家暮らしの人は、住まいで「持ち家」を選ぶか、家賃の欄を0にしてください
  • 統計は2025年(家計調査)と2023年(住宅・土地統計調査)の値です。物価が動けばずれます
  • 貯蓄の目安1割、判定の線(15/33/50/100%)は、第2回と同じくこのブログが置いた独自の基準です

結局、誰におすすめか

  • 第2回で「5%以内だから大丈夫」だった人 → 家賃が高い地域で一人暮らしなら、もう一度こちらで見てみてください
  • 家族がいる人 → 手取り比より、こちらのほうが実感に近いはずです
  • 「仕事で回収できている」人 → 第1回・第2回と同じで、この診断の対象外です。ROIで見てください

連載「AI課金貧乏」はこれで一区切りです。

使った統計と加工の内訳

  • 総務省 家計調査 2025年 家計収支編。単身世帯は第1表、世帯人員別は第3-1表、世帯類型別は第3-6表。いずれも「勤労者世帯」の列を使っています(全世帯の平均は無職・高齢の世帯を含むため、働いている読者の家計とずれるからです)。手取りに合わせる調整の分母は、その列の可処分所得です
  • 総務省 住宅・土地統計調査 2023年 表123-1「住宅の建て方・世帯人員別 1か月当たり家賃」。借家に住む主世帯の、家賃0円を含まない平均。都道府県別、世帯人員1〜4人と5人以上
  • 「交通」は家計調査の「交通」と「自動車等関係費」の合計。「その他」は「その他の消費支出」から「交際費」を除いたもの。それ以外は表の値そのままです
  • 家計調査の「住居」は使っていません(持ち家世帯が混ざって低く出るため)
  • e-Stat からダウンロードした元のExcelと、そのSHA256、正規化スクリプトはブログのリポジトリに置いてあります。数字は盛っていません